複数ロット販売について
ちょっと真面目なお話
文:GANESH /写真:井上浩輝/SorAsha
複数ロット販売……のお話の前に、キャッスルトン3缶セットについて少々情報の補足を。
2020年夏茶ダージリンの特別企画、キャッスルトン3缶セット。
先のコラムでお知らせした通り、ガネッシュ約40年の歴史で初めての試みです。
というのもこのセットは、今季ダージリンFTGFOP1(ダージリン最高ランク)のロットサンプルの中から、ブラインド・テストによりガネッシュのティー・テイスターが特に秀でて素晴らしいと判断した3ロットが
・全てCastleton Tea Estate(キャッスルトン茶園)のものであった
・かつその落札に成功した
という偶然があって実現し得たものだからです。
新茶の紅茶 の真髄、日本でのティー・テイスティングは、完全なブラインド・テストで行われます。
紅茶のブラインド・テストとは、茶葉に関する全ての情報、茶園名やチャノキ(茶の木)の種類等々の情報を全て隠し、茶葉そのものと茶液のみにより、味・香り・品質をテストする方法です。
Photographed by 井上浩輝
ブラインド・テストで選ばれた3ロットが全て同一茶園であったのは、1983年に始まったガネッシュの年3シーズン計110シーズン以上のティー・テイスティングの歴史で初めてのこと。
滅多にないこの機会を利用して、みなさまに
最高級ダージリン同一シーズン・同一ランク・同一茶園でロットが異なる茶葉
の味・香りの趣を体験していただきたいと考え、今回のキャッスルトン3缶セットが実現しました。
さて、
「今回のような特別企画商品に限らず、複数ロットを同時に販売したらどうか。」
お客さまからこのようなご意見をいただきました。
わたくしたち 新茶の紅茶 ガネッシュは、お客さまおひとりおひとりのご要望にできる限りお応えしたい、という思いを胸に日々業務に取り組んでいます。お客さまに合わせた柔軟な対応をとることができるのは、わたしたちのような小さな会社の強みです。
しかしながら……「世界一小さな紅茶メーカー」であるわたしたちは、創業以来今に至るまで、紅茶を缶に詰める作業も、缶にラベルを貼る作業も、ラベルのデザインや印刷も、全てを手作り・手作業で行なっています。
私たちの小さな小さな作業場で、複数ロットを常時間違いのないように管理し、責任をもってお客様にお届けすることは、大変難しいことです。
現段階では、特別企画としてキャッスルトン3缶セットをおつくりするのが私たちの精一杯。複数ロットを常に同時販売してほしいというご要望にお応えするのは難しいと判断しております。
自分たちでデザインした缶帯を
自分たちで印刷し
カッターで切りとり
セロハンテープでとめたら…
くるっと巻きます!
紙がたるむと格好が悪いのでぎゅーっと力を入れて引っ張って。
30年以上も使い続けているボール紙を重ねて作った台の上で
上下のシュリンクの長さを調整したら
ヒートガン(シュリンク専用のドライヤーのようなもの)で
全体を満遍なく縮ませていきます。
シュリンクにはヒートガンを使う人の性格がよく出ます。
速い!が特徴のスタッフもいれば
きれい!が特徴のスタッフも。
キャッスルトン3缶セットを受け持つのは「きれい!」なシュリンクが得意なスタッフです。
製品化の過程をある程度外注したり、もしくは機械化すれば、効率は上がり、ある程度の正確性を担保できるでしょう。
しかし、私たちがオークションで競り落とし 新茶の紅茶 として販売するのは、ダージリン・アッサムともにインド紅茶庁が認める最高ランクの紅茶のうち、さらにほんの一握りの、その季節最高の味と香りをもったお茶、のみ。
そもそも機械化の採算ラインに乗るほどの量の紅茶が、ありません。
世界一の品質・本物の紅茶を世界最低価格でお客さまへお届けし続けるには結局のところ、アイディアと、工夫と、なにより汗水垂らす時間をたくさん注ぎ込み、自分たちの手で1缶1缶を愚直に作り上げる、創業以来のこの方法しかないのではないか、と考えています。
ダージリンやアッサムの茶園で一芽一芽の茶葉を手で摘み取る茶摘みがガネッシュ創業当時から何も変わっていないのと同じように、私たち 新茶の紅茶 ガネッシュも、正直で真面目な商品を文字どおり自らの手で汗をかきながら作り、堅実にお客さまへお届けし続けてまいりたいと思います。