『新茶の紅茶この一杯』
〔沖縄北部与那覇岳の湧水編〕
沖縄県の最北端に位置する国頭村(くにがみそん)に沖縄本島の最高峰、与那覇岳(よなはだけ)があります。
そこに湧く水を求めて行って来ました。
ここは未だにヤンバル(山原)の森が多く残っています。その面積は村の85%を占めています。
沖縄を縦断する国道58号線沿いの道の駅、『ゆいゆい国頭』から山奥のフエンチジ山を目指す大国林道へアプローチし、原生林の只中を車で走ること約30分。
目指す湧水に到着しました。
そこは亜熱帯の植物が生い茂るジャングルでした。
林道の脇にひっそりと2本のホース。そこから勢い良く清い水は流れ出していました。
早速ひと口、ゴクリと呑んでみました。
「うーん、ふくよか、そして、あま~い」
わたくしの好みの水です。
まずは夏茶のダージリンを煎れ、それを磁器のポットと茶帽子でゆっくり蒸らしている間に、特産のやぎのミルクでアッサムミルクティーを入れました。
やぎのミルクと言えば、わたくしがカルカッタ(現コルカタ)で紅茶の研鑽を積んでいた時に毎日何杯も飲んでいたチャイ屋のミルクがやぎのミルクでしたので、懐かしい味がしました。ちょっと癖のある風味は湧水の量を多目にすることで、程好く薄まり、美味しく飲めました。持参の紅茶シフォンケーキとの相性もぴったりで、極上のティータイムを過ごせました。
今回は森で道に迷う可能性のある行程だと予想されたので、わたくしはにーにー(沖縄の方言でお兄さん)と慕う知名さんに案内をお願いして、連れて行ってもらいました。
各地の川とダムをこよなく愛するにーにーは『ザ沖縄人』。
道中もヤンバルの森のことや沖縄のことをいっぱい教えてもらいました。
沖縄の水は、その昔隆起した珊瑚礁の岩盤の影響を受けた、カルシウムやマグネシウムを含む弱アルカリ性の硬水が多いので、水の影響を特に受けやすいダージリンは、水色が濃くなり、味わいも強くなりがちです。しかしここ与那覇岳の水は、空気を多く含んだやわらかい風味で、その透明感は北海道の水を思い出させる逸品でした。
30分じっくり蒸らしたヤンバル水のダージリンは、香りも味もパーフェクトでした。
このヤンバルには、亜熱帯の様々な植物とともに、お茶のお母さん(原木)である椿も自生しており、親しく思わずにはいられませんでした。
あべ耕也 記