ガネッシュティーテイスターKの雑記帳
一杯のダージリンティー
インドダージリンで飲んだ『一杯のダージリンティー』に震える感動を覚えてから始まった紅茶人生も早40年。
その間どれだけの数の新茶と向き合って来たのだろう。
テイスターとして競りに挑む前の数多くの新茶を前にしてのテイスティングは真剣勝負。
新鮮な紅茶の道案内として講座を通じて多くの方へ新鮮な紅茶の素晴らしさを伝えて来た人生。
その上わたくしが選んだ紅茶を使ってお店を開かれる方には更に高度で真剣なご指導をして来ました。
更には究極の一杯を求めて、毎年1ヶ月間、極めた自然水(湧水)を求めて、茶道具と共に12年間北海道の各地を旅してきました。
やがて北海道から全国へと南下、沖縄のやんばるの森まで辿り着きました。
すべては『一杯のダージリン』を極める為にです。
ところが、『その一杯』との出会いは思わぬところでありました。
僅か数日前、ところは沖縄市の珈琲専門店。
オーナー店主の久高さんご夫妻との出会いはつい最近。
天然酵母パン宗像堂さんでの紅茶を楽しむ会で初めてお会いして、えらく新茶の紅茶を気に入られて、淹れ方などを教える流れになり、後日集中指導をしました。
その後はご夫妻で新茶の紅茶に真摯に向き合われ、いよいよメニューデビューの前夜を迎え、わたくしに味見をして欲しいとの依頼がありました。
閉店後の静かな店内。
硝子の器にたっぷりと注がれたその一杯からは光がはっきり見てとれました。
見惚れました。
直ぐには口を付けず、先ほどまで紅茶液を温めていたポットの中の出し殻をチェック。
オッケー!
良い香り。
さほど間をおかず同じく透明な器にたっぷりと注がれたアッサムストレートティーとアッサムミルクティーがテーブルに運ばれてきました。
3杯から発するオーラが半端ではありません。
でも、それが極めた一杯の仲間入りをするとは期待せず、久高さんの入魂のその一杯『ダージリンストレートティー』を口に運びました。
『・・・・・・・・』
『ことばにならない』
「実に素晴らしい」
わたくし自身がおごり高ぶっていた事を知らされる一杯でした。
確かにわたくしが選んだ新茶の紅茶です。
わたくしが『究極の一杯への扉』のその鍵を持っていると信じてここまで来ました。
新鮮な茶葉をわたくし自身が選び、水を選び、道具を極め、そして長年の経験を加えれば、『究極の一杯は自身が生み出す』の自負が当然の様に根底にあった気がします。
例えるなら、シンガーソングライターが、自身の表現を超えるカバーを唄う人に出会った衝撃とはこういうものではないでしょうか。
彼にはまったく驚かされました。
そして、真っ直ぐに尋ねてました。
「どうして短い間に、この様な一杯に辿りつきましたか?」と。
彼はわたくしに教えられた事を忠実に守ろうとしただけ。
その中で最も守ったのが
『我を入れない様に』
と言うこと。
わたくしの芯には、自身こそが極めた紅茶を淹れられるとの我が知らず知らずに渦巻いていた事を知らされました。
特別な水ではありません。
特別な淹れ方もありません。
道具も普通。
ただただ真摯に向き合った作品にしばらくは言葉を失っていました。
アッサムストレートティーもアッサムミルクティーも同様な神々しさを放っていました。
新鮮な紅茶が持つ無限大の可能性と、淹れる人によってこうも全てが変わる事を40年目にしてあらためて知った夜でした。
<SHOP DATA>
KRAMP COFFEE STORE
住所:沖縄県沖縄市泡瀬5-32-2
電話番号:098-938-0833
営業時間:10:00〜17:30
定休日:火曜日