阿部耕也の紅茶日記
春茶と産毛 9/27
9月も末。ここ仙台は風も空もすっかり秋色に染まってきました。
お陰様で好評の内に春茶が販売されており、特にCastleton農園のダージリンティーはあっという間に完売し、イメージの持つすごさを強く感じさせられました。
毎年のことですが、春茶の季節になると産毛のことについての質問がよせられます。そこで産毛について少しお話ししますと・・。
茶葉の芯芽の裏側に生えている産毛は中国語では【白毛】と書き「パイハォウ」と発音します。これが英語でPEKOEペコー又はピコーと発音される言葉の語源とされています。
摘み取りシーズンの中でこの産毛が最も多くついた茶葉が収穫出来るのが春。つまり春茶です。産毛がたくさんついているかどうかは茶樹の健康状態を見るバロメーターでもあります。人間の赤ちゃんも産毛がたくさん生えて瑞々しい柔らかな肌で生まれてきますよね。この産毛で覆われているからこそ保湿されて柔らかな肌でいられるのです。そしてこの柔らかで瑞々しさを保つための産毛にこそ上品な香りと味わいの秘密が隠されているのです。
さて、私共新茶の紅茶にも、特にダージリンリーフティーにはこの瑞々しさを保つための産毛がとても多くついています。丸い紅茶缶の中を覗いていただくと金色をした産毛がびっしり付いているのがよくおわかりいただけます。紅茶缶の内側を指でそっとなでてみて下さい。指先に綿毛のように産毛が付いてきます。
ところでガネッシュでは木箱や麻袋に入ってインドから届いた紅茶を一缶一缶手作業で丁寧に缶に詰めていきますが、この作業をする時にはマスクで喉を守りながら作業を進めなくてはなりません。もしマスクをしなかったら2、3缶詰めただけで喉の奥がイガイガし始めて、うがいをした位ではなかなかとれません。この作業をする手元では大型の換気扇が廻っているのですが、換気扇のフィルターにも金色の産毛があっという間にびっしり付着してしまう程です。
ところがこの柔らかくて上品な味わいを出すためには欠かせない【産毛】がクレームの対象になってしまうことがあるのです。「紅茶に金色っぽいカビのようなものが付いています。」というものです。ある時は弊社のティールームでの出来事ですが「紅茶にほこりが浮いています。」とお客さんから言われたこともあります。
これこそ美味しさを目で確かめることが出来る貴重な現象、ゴールデンリングなのです。
何事も極めたものというのは波紋を投げかけてしまうことになるものですね。